下家さん、ニューノーマル時代に合った働き方や組織とはどのようなものですか?

ハタラキカタログ
14

下家 千明

  • 株式会社かたちえ取締役
    一般社団法人いろはこ代表理事
新型コロナウイルスの影響で今、働き方や組織作りが大きく変わろうとしています。人の強みを活かし、組織力を最大限に引き出す専門家としてコンサルティング活動を行っている「かたちえ」の下家千明さんに、オンラインでお話を伺いました。
  • 取材・文 安楽由紀子
  • 写真 高井正彦
  • ※掲載されている情報は取材当時のものです

カスタマイズされた働き方をサポートする仕組み作りを

これまでのお仕事と現在の活動について教えてください。

現在、共創型コンサルティング会社「かたちえ」で、「ストレングス・ファインダー®」(アメリカのギャラップ社が開発した、人の「強みの元=才能」を見つけ出すツール)や、「マインドマップ®」(イギリス人教育者のトニー・ブザン氏考案の、思考プロセスを反映したノート法)などを使い、人の強みを活かして人材と組織力を最大限に引き出す活動をしています。 

私が人材開発に携わるきっかけになったのは、大手家電メーカーを経て複写機メーカーに転職した時のこと。営業アシスタントとしてお客様に直接デモンストレーションを行う機会に恵まれ、目の前の人たちの役に立つことがとても楽しいと感じたんです。その後、ITベンチャーでエンジニアの採用と育成を行いましたが、同じエンジニアでも、A社ではすごく活躍するのに、B社では全然パフォーマンスを発揮できないということがあったんです。どうしてだろうと疑問を感じ、そこから産業カウンセリングやキャリアコンサルティングの勉強を開始しました。その流れでストレングス・ファインダーやマインドマップを学んでいくうちに、「かたちえ」代表取締役の松岡(克政氏)と知り合ったのです。

人材と組織力を引き出すための仕組みや、働く場に必要な機能とは、どのようなことだと思いますか。

私たち「かたちえ」が支援しているのは、お客様の組織を前進させ、成果を出すこと。これからは、ニューノーマルに合った新しい組織体を作っていく必要があるように思います。さらに「会社」ではなく「自分」が主語になる時代なので、個人が働き方をカスタマイズしていく時に、会社がそれをサポートできる仕組みが必要です。よく「心理的安全性が大事」と言われますが、安心安全な場というものはそれぞれの組織によって違いますので、みんなで考えることも必要だと感じます。 

また、個人の気づく力や学ぶ力を育てることも必要です。これまではオフィスで周りの人の在り方や行動を見ることで自然に育まれていきましたが、コロナ禍で一緒に過ごす時間が少なくなる中、これは重要なテーマだと思います。リモート上でも、何か気づいたらアラートを発して、知らせることができるシステムがあればいいですね(笑)。

リモートワークの時代、情報の透明性を高めることが鍵

「ウィズコロナ」という社会状況において、どのようなスタイルが、ワーカーのパフォーマンス(知的生産性・創造性・効率化)向上に貢献していくと思いますか。

まずリモートワークが進むことで、社外の人とつながる機会がさらに多くなるでしょう。私も「かたちえ」メンバーとして様々な企業とのプロジェクトがありますし、ほかにもプライベートで計画しているプロジェクトもあります。こうして個人がいくつもチームを持つようになると、マネージャーは会社の業務だけを見るのではなく、その人がどれだけ所属するチームを持っているか、どこでどのようなパフォーマンスを発揮している・強みを活かしているのかを理解したり、情報収集したりしていく必要が出てくるのではないでしょうか。 

そして、前述したようにこれからは「自分」が主語になっていきます。「ワークライフインテグレーション」という言葉も提唱されていますが、ワークとライフが統合されて、その時々で軸足を置く場所を変えるスタイルが、ワーカーのパフォーマンスを上げていくと思います。そうすることで様々なチームとのコラボレーションがますます広がり、ワーカーはさらに視野を広げていく。 

こうした働き方が主流になると、組織においては、個々が「パフォーマンスを発揮したい」「自分が貢献したい」と思える組織へのエンゲージメントが欠かせません。組織の目的が一貫性を持ってメンバーに伝わらないと、みんなの気持ちは離れてしまう。全員で同じ方向に向かうためには、何をするための組織なのかを明確にする必要があります。

リモートワークによってメンバーの顔を合わせる機会が少なくなると、リーダーが目的を皆に伝えてまとめていくことは難しくなりそうです。

リモート画面での対話だからこそ壁を取り払って、分かりやすい言葉を意識しながらみんなに伝えることが簡単になる、とも言えます。その際、組織にとっていいことばかりでなく課題もきちんと伝え、情報の透明性を高めることが重要。通常、オフィスにみんなが集まっていれば、噂話や雑談として組織の課題も自然と共有されてアイデアのネタになることがあります。しかし、リモートではそういう情報がまったく入ってきません。リモートの特性を生かし、双方向で必要な情報を正しく、いいタイミングで伝わるようにするといいですね。

理想は自分の成功パターンを分析したオフィス空間

ワーカーのパフォーマンスを上げるために、テクノロジーはどう貢献していくと思いますか。

スマートフォン1台あれば何でもできる時代。行った先がオフィスになるような、マイオフィスを持ち歩けるような技術が開発されたら嬉しいですね。マイオフィスは、自分の成功体験を思い出したり、生産性が上がったりするような空間になっているといいと思います。 

というのも、自分の成功パターンをしっかり見極められれば、同じ失敗の繰り返しを回避できると思うんです。例えば、アイデアを思い浮かべるときに、誰かとディスカッションしているほうがいい人もいるし、散歩しながら内省したほうがいい人もいます。そういった行動パターンを分析し、自分が一番能力を発揮できるのはどのような環境なのかを可視化できれば、仕事の効率はもっとアップするでしょう。ほかにも例えば、企画する時にまず情報収集をするのか、とにかく絵を描いてみるのか、成果へのアプローチはそれぞれです。そういった行動を分析して不得意な部分はAIがサポートする。人と機械が協力できれば、より創造性の高いことができるのではないかと思います。

働き方の未来はどうなっていると思いますか。

2017年に「ストレングス・ファインダー®」を開発したギャラップ社のCEOが来日し、ワーカーのニーズが変わってきたという話をしました。 

彼らのニーズを表す言葉として、かつての「給料」「満足度」から、今は「目的」「成長」などへ変わったそうです。特にミレニアル世代以降の若い人たちは、自分が何のために働いていて、何のためにメンバーと一緒にいるのかを重視しています。「ウィズコロナ」の時代となり、ますますこういった点が問われる時代になるでしょう。

下家さんにとって
「働く」とは?

お互いの価値を発見して共有しながら、ビジョン(夢)を実現していくことが働くこと。「働くは、傍を楽にすること」は昔の商人の知恵です。私は以前、ビジネスの観点で江戸しぐさを研究していたのですが、この言葉を知って「なるほど」と思わされました。今は「傍を楽(らく)」から「傍を楽(たの)」しくすることが働くことなのではないかと思っています。